支払督促の勉強に墨田庁舎へ

おれの中で長らく懸案となっていたギャラ未払い問題。先方(社長)とメール交渉してきたが、向こうがもう交渉を打ち切ると一方的に通告してきた。自分は社長を降りるし事務所も移転するとのこと。それだけでなくフリーランスの人間を馬鹿にする仕打ちをしてきやがったので、温和で弱気で草食系なことでは定評のあるおれではあるが、引き下がるわけにはいかなくなった。
ネットで「ギャラ」「未払い」「ライター」などで検索したところ、支払督促の申立という制度があると知った。裁判を起こすよりも安く手軽にできる制度で、こちらから申し立てれば簡易裁判所から相手の方に督促状を送ってくれるというものらしい。裁判所のサイトでだいたいのことはわかったつもりになったが、とりあえず相談に行ってみようと思い、東京簡易裁判所墨田庁舎に出向いた。東京簡易裁判所霞ヶ関にあるのだが、支払督促については墨田庁舎が管轄しているのだった。
錦糸町駅からスカイツリーを見ながら歩いて7分ちょっとのところに、わりと新しめの庁舎あり。そこの6階にある民事第7室が支払督促の担当部署。部屋に入ると地方自治体の窓口みたいな感じ。銀行の窓口みたいな発券機があって、そこで券を抜くとすぐに中年の男性職員さんが寄ってきたので、支払督促の申立をやってみたいのですが、と相談。必要なのは、申立書、当事者目録、債務者の商業登記簿謄本と、あとはお金。申立手数料は請求する額によって決まっていて、30万円の場合は1500円。督促状を送達するために郵送料(督促正本送達費用)が1080円。支払督促発付通知費用が120円。1500円分の収入印紙と1200円分の切手を用意すればOKだとのこと。
申立書はA4ペラ1枚。用紙に「「債務者は債権者に対し、請求の趣旨記載の金額を支払え」との支払督促を求める」などの文字が印刷されており、金額や名前などを記入・捺印すればいいだけ。これに「請求の趣旨」を書いた紙をつければOK。いくつかひな形が用意されていて、事情を説明すると「業務請負契約ということになりますね。ライターと出版社というそのまんまのはないけど、まあこのへんかな」と職員さんがひな形を持ってきてくれた。ホームページの作成を発注されて納品したのに支払がないという例だった。このひな形をもとに「請求の趣旨」「請求の原因」を書き込めばよし。もらったフォーマットの用紙じゃなくても、要素が入っていれば自分でパソコンで打ってプリントしたものでもかまわないそうだ。
当事者目録は、債権者(おれ)と債務者(先方)の住所と氏名と電話番号などを書けばいいだけ。
債務者の商業登記簿謄本は、相手が法人の場合には必ず取らなければいけないもの。法務局に行って取る必要があり、手数料は700円かかる。この手数料は支払督促の額にのせて請求していいものだとのこと。
これらの必要アイテムを揃えたら、一式をこの墨田庁舎の窓口に提出すれば(or窓口宛に郵送すれば)それで手続きは終了。実に簡単だ。誰でもできそうだ。あとは裁判所が書類に不備がないかどうかをチェックして、問題がなければ支払督促が相手に届く。こちらには支払督促発付通知が届き、今度は仮執行宣言申立書というものを提出する。すると裁判所は仮執行宣言を発付。これは判決と同じ効果をもっていて、こうなると債権者(おれ)は強制執行を申し立てることもできるようになる。督促が届いて2週間以内に相手が異議を申し立てると、訴訟になる。逆にいえば、2週間以内に異議を申し立てないと債権者の主張を認めたことになる。
債権者が申し立てれば自動的に督促が相手に行くという便利なシステムだが、それを悪用する輩も存在し、支払督促詐欺という社会問題になっているという。身に覚えのない督促を受領して、よくわからずに2週間放置しておくと、異議がないとみなされ、相手の請求額がそのまま債務になってしまうわけ。おお、コワ。
てなことを学んで、よし、やっぱ支払督促をやってみるか、と思って帰ろうとしたのだが、1階から出ようとしたときに違う窓口があるのを見つけた。それは「民事調停」の相談窓口だった。なんだべなと思ってパンフなどを熟読していたら、若手の職員がやってきて話しかけてくれた。ちょっと事情を話すと、調停という方法もありますよ、興味あれば説明しますよとのこと。でまた番号札をとって窓口で相談。若い女性職員が説明してくれた。裁判所内の部屋で裁判官と調停委員立会いのもと、相手と話し合ってトラブルを解決しようとするのが調停。手数料は支払督促と同じ。裁判よりも手軽な感じでいいのだが、調停日に相手が現れなかったとしても別にペナルティーはなく、その後裁判になったとしてもこちらに何か有利な状況は生まれないというのがなんだか非常に損な感じがした。
やっぱり調停より支払督促のほうがいいなと思ったのだが、職員さんと話しているうちに、簡易裁判所が担当するもうひとつの方法に興味がわいてきた。それが少額訴訟だ。窓口のパンフによれば、おれのようなケースでは調停と支払督促と少額訴訟の三択。支払督促をやっても相手が異議を唱えたら訴訟に移行するんだったら、最初から訴訟を起こしたほうが速いんじゃないか。これまでのやりとりを振り返ると、督促が届いてはいそうですかと認める相手とは思えないよな。。。ただ、少額訴訟については霞ヶ関庁舎のほうで担当しているんですよ、と職員さん。なんだ、最初からそっちに行くべきだったか、と思いながら墨田庁舎を後にして、錦糸町駅近くのラーメン屋でラーメン食って帰った。北海道系だった。