リフティング王・土屋健二の本!

 わがフットサルチーム・ピルマACの岡林主将が構成・文を担当した単行本『サッカーリフティング&ジンガバイブル』(カンゼン)が発売された! あのペレも絶賛した(実話!)リフティング仙人・土屋健二さんのテクニックを余すところなく収録したDVD付きブック。*1世にリフティング解説本は数あれど、この本は従来のそれらとは一線を画している。
 まず、従来のそれらのような、かっこつけ感が皆無なのがイイ。なんかほら、最近流行のリフティング本って、どれもストリートファッションみたいなのと結びつけられすぎちゃってて、おれのようなユニクロキッズ(キッズ?)には敷居が高いんだ。本屋で立ち読みしたくても、「あいつ、ユニクロのくせに…」って後ろ指さされる気がして手に取りにくい。考えすぎなのはわかっていても、考えざるをえないのだ。土屋さんはその南米っぽい風貌ゆえかスタイリッシュな感じがまったくしないし、本全体でみてもオシャレっぽいカットは一枚もない。明らかにこれは、アンチオシャレ層を狙った編集者の戦略であろう。
 次におもしろいのは、リフティング理論そのもの。こういう本では、なによりも具体的なハウトゥー紹介が重視されがちだが、本書では、個々のテクニックよりもむしろ、土屋健二が編み出した独特のリフティングスタイルを紹介することに主眼が置かれていると思う。それはつまり、「ウェーブリフティング」と「ジンガ」。DVDを見れば一目瞭然だが、土屋健二のリフティングは明らかに普通じゃない。つねに全身がくにゃくにゃしていて、腕とかもなんかへんな動きをしていて、ついでにいえば舌も出たり入ったりしている。もしかしたらこの人、伝説の関節話法でしゃべるマザング星人? とすら言いたくなるほどのヘンな動きなのだが、全身を波のように揺らすことでボールタッチをやわらかくするということらしい。その波の動きを横方向に展開したのが「ジンガ」。土屋さんが編み出したこの二つの独自理論を具体例で説明するためにこそ、本書収録の50技はあるのであった。つまりこれは、帰納的ではなく、演繹的なリフティング本。
 もう一つ、イイのはテキスト。知り合いが書いてるから、というのも少しあるが、いや、知り合いだからこそ、この本のテキストはおれにジェラシーの波を起こさせた。具体例を出すのはめんどくさいのでしないが、この著者はもしかして説明文という分野で天下を取るのではないかと思わせる。こいつは自分で理解していないことを理解したふりをして書くことをしていない。土屋さんの説明を聞いて、それはどういうことなのかとしつこく納得するまで問い詰めていることが容易に想像できる書き方をしている。つまり、よくわかる。技なんて、DVDを見ればいいっちゃいいんだけど、一言言葉の比喩表現があるだけで理解が10センチ深くなる。そんな感激を味わえた。
 ただ、この本を読んだからといって、リフティングが飛躍的に上達するとは言えない。実際問題、岡林のリフティングなんて見たことがないし、彼がこの仕事の後にサッカーがすんごくうまくなった、という事実は存在しない。だが、この本を読んで、ウェーブリフティングを取り入れたら、リフティングが飛躍的に上達するかも、と夢を見ることはできる。サッカーがヘタな中年だって、夢を見たいじゃないですか!(夢締め!)
http://www.kanzen.jp/juggking/index.html
http://majiya.hp.infoseek.co.jp/index.html

(リフティング王土屋健二の)サッカー リフティング&ジンガバイブル(DVD付)

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*1:じつは土屋さんとは、2002年W杯のときに会っている。埼玉スタジアムで行われたサウジ対カメルーン戦。チケットを妻に譲り、おれと息子と娘は駅前広場でイベントを見物したりカレーを食ったりしていたのだが、そのイベントに「リフティング兄弟」の一人として参加していたのが土屋さん。「リフティング兄弟」といっても、もう一人のELTの男性に似た人の方はそれほど上手でなく、ほとんど一人だけが技をやるという染之介染太郎スタイルで、ギャラの配分はどうなってんのかなーなんてことを心配した覚えがあるが、イベント後、試合が開始されて人気が少なくなった広場で佇んでいたら、その土屋さんが話しかけてきてくれたのだった。