編集的に影響を受けたリスペクト図書リストなど


親愛なるみなさんの報告のおかげで、なんだか思った以上に地味というか謎のコーナーと化しているらしいことが判明した高井ジロルフェア(仮)ですが、いいんです! 推薦してくれた人がいて、それを受けて実行してくれた人がいて、それをわざわざ見に行ってくれた人もいるという事実だけで、おれは1ヶ月前のおれよりも幸せ者なんだということがわかりますもの! せっかくなので、フェアに向けて用意した著書紹介文と本棚を久々に見渡して選んだ推薦図書リストをコピペしときまーす。

●マイ著書(もっとあるけど、ほかは入手不可ということでだめでした。。)

笑う世界地図』(彩図社
社会科の時間に地図帳を眺めて珍地名を探した思い出を増幅させた一冊。地名の神様が悪戯心で紛れこませた気配が漂う各地の珍地名を抽出して独自テーマ別にマッピングした、現地に行く金も意欲もない小市民ならではの、使えないけど楽しめる机上派地図帳。誰も誉めてくれないけど、45pの地名連続スタイルは新機軸だと思います!

魂を熱くさせる 宇宙飛行士100の言葉』(彩図社
文系人間がなんとか宇宙に近づける方法はないのかと考えて生まれた、宇宙飛行士や宇宙飛行士を支えた人々の名言集。宇宙に行った人の言葉を読み進めれば、実際には行けない自分も0.0000001ミリぐらいは宇宙に近づくことができる、と思いこんで制作。といいつつ31pで酷い書き間違いをしています。クランツさん、ごめんなさい。

読めそうで読めない!日本史の漢字1000』(芸文社
歴女で盛り上がった歴史ブームと、世を席巻した漢字本ブームとを組み合わせたら、ものすごいことになるかも、と色めき立って企画。知ってはいるけどいざ読み方を聞かれるとゴニョゴニョごまかしてしまいがちな日本史用語を、高校の日本史教科書からかき集めました。芸文社の小田部さんと一瞬だけ夢を共有したことは確かです。

Globes -地球儀の世界-』(ダイヤモンド社
小学生の頃、自分だけ買ってもらえなかった地球儀。大人になって買おうと思ったら今度は妻から邪魔だから買うなと言われた地球儀。自分で本にして眺めて楽しむなら文句ないだろ! という気持ちで作った、本邦初の地球儀カタログです。そんないじけた人間でも地球儀を眺めていると安らぐんですよ。編者は断然渡辺教具派です。

原色ガチャガチャ生き物図鑑』(ダイヤモンド社
ユージン(現・タカラトミーアーツ)が展開するカプセルフィギュア「原色図鑑」シリーズに感激して企画。三次元の立体動物図鑑を二次元化するということで、生き物全種類をページの表裏展開にしたのが自分としてはお気に入り。今見直すと、67pの鮎の質感なんか、まるっきり伊藤若冲だよなぁと思うんですけど、どうですか?

なつかしの理科室』(アスペクト
『ベルマークのひみつ』(日本文芸社)を作った際に入手した内田洋行のカタログを見て、試験管やアルコールランプなどの理科教材の美しさに取り憑かれて企画。理系に飽くなき憧憬&嫉妬を抱く文系としての自分がにじみ出た感じ。昔は石綿付き金網だったのが今はセラミック付き金網になっていたりするのも見逃せませんでした。

いぬ・ねこ せかい地図絵本』(カンゼン)
アフリカには象、中国にはパンダ、みたいに野生動物をマッピングした地図絵本は多いけど、動物園に行かないと会えない動物より、公園で会えそうな動物のほうが、こどもの国際的な入口としては身近でいいのでは? と思って作った自身初のこども向け絵本。個人的にはこどもの頃飼っていた雑種犬コロへの鎮魂歌でもあります。

「漢和辞典」に載っているヘンな漢字』(二見書房)
漢和辞典の最高峰『大漢和辞典』から素人目線で見て妙に見える漢字を選び、漢字の先生の解説とともに紹介した本。いつものように対象をおもしろがるだけではいかん、と思って監修者を探したのですが、扱いたい漢字リストを見せると一様に面倒がられてひと苦労。でも最終的にはすばらしい先生にめぐりあうことができました。

チャイニーズQ』(情報センター出版局)
ゲルマンQ』『イタリアンQ』『フレンチQ』『スパニッシュQ』に続くカジュアル雑語学シリーズの第五弾。本書がきっかけで「笑っていいとも」の中国語クイズに関わりました。装幀上はデザイナーの平塚さんが苦心した小口がチャームポイント。表からパラパラしたときと裏からパラパラしたときで色が変わるのです。気づいて!

世界珍名偉人録』(ワニマガジン社
バカーチン、マンコッチ、シコルスキー…。日本人だけが喜べる名前を持っている人こそ真の偉人なのである、という信念だけで作った一冊。自分が高井次郎という平凡な名前なので、変わった名前の人にはどども色のジェラシーを抱いています。「平成の地獄絵師」こと金子ナンペイさんが肖像画を描いてくれたのが嬉しかった!

生活様式学入門』(扶桑社文庫)
大岡まさひさんとの研究ユニット・現代生活様式学会のデビュー作です。いまはなき雑誌「ダカーポ」に載った学会記事を、サブカル本で知られた扶桑社の碇さん(現・ポプラ社)が見て声をかけてくれたのがきっかけ。自前の白衣を着て10回ぐらいTV出演したのはほろ苦い思い出。自分が手がけた本ではいまでも一番売れたものです。

新・生活様式学入門』(ぴあ→扶桑社文庫)
生活様式学入門』に収まらなかった研究を30本収録した続編では、よりもっともらしく見えるのではないかと期待して縦書きを採用。巻末には学会会員証がついているので、名誉学会員になりたい奇特な貴方はどうぞ。「のれんのくぐり方」「温泉卓球における浴衣の着こなし」「手ぬぐいの処置」とすでに中年度が高い感じかも。

焼肉様式学入門』(アートン
生活全般を研究してきたのに突然焼肉という特化ジャンルに進出したのは、落ち込むと焼肉のポジフィルムを取り出して眺めて己を励ますという女性の存在があったから。あくまで表層的に、時にはグラマラスに、焼肉に様々な角度から肉弾戦を挑んだ小記録です。「牛角」のPR企画に使われて一度タダ食いさせてもらった思い出あり。

現代サッカー様式学入門』(三才ブックス
サッカー本といえば選手のインタビューか評論家の戦術解説ぐらいしかなかったので、もっと表層的な楽しみ方だってあるでしょ、と思って企画。2002年日韓W杯を浅く思い出すにはいまでも最適本だと自負しております。表紙には尻画像で作ったモレノ主審、ページ左下には選手顔パラパラモーフィングといった小手先の仕掛けも。

ドイツW杯スーパーサブガイド』(三才ブックス
前著が役立たずすぎたという反省を受け、2006年ドイツ大会前に、ガイドブック機能を加える形に路線変更して制作。ぬりえで覚える各国ユニフォーム、ドイツ語クイズ式ベニュー紹介、各専門誌の紹介文比較で選手の特徴を一発理解、など有意義なものも。2色刷りなのにドイツ国旗3色を意識させるナイス装幀はアチワデザイン室。

●編集的に影響を受けたリスペクト図書

サルまん』(相原コージ竹熊健太郎小学館
マンガに限らず、編集を志す者すべてが読むべきバイブル。2人がだんだん狂っていく様子に心奪われました。コミックスのフォーマットを全部厚塗りの油彩で描いて再現した初版本のカバーに憧れて、自分が担当したフリーペーパーでサル真似したことがあります。

バカには絶対解けないナゾナゾ』(白崎博史&石黒謙吾/朝日新聞社
偉人名や学術用語を活用したなぞなぞ集。本書を手にした瞬間、地団駄を踏みました。笑いは知的なもの。バカを英雄視する風潮は嫌いなので、このタイトルは最上質だと思います。『コマボン』(扶桑社)以来、石黒さんの手がける本は常に最大級の嫉妬対象です。

歴史Web』(藤井青銅&金谷俊一郎/日本文芸社
歴史を新聞形式で叙述した同社の名著『歴史新聞』をウェブで置き換えた一冊。邪馬台国が公式サイトを開いていたら、清少納言がブログを書いていたら…という思考実験を完遂。定番のネット用語表記が時代とともに変遷するなど、細かい部分までいい仕上げが。

かっこいいスキヤキ』(泉昌之/扶桑社文庫)
現代生活様式学会をやろうと思ったのは、この本を読んだのがきっかけ。紳士が駅弁に向き合う「夜行」に衝撃を受けました。食べ方に代表される生活様式へのこだわりを、マンガの一人称じゃないスタイルでやればいいんだと気づかせてくれた、恩人というか恩作。

みんなのかお』(戸田杏子&さとうあきら/福音館書店
とんち系動物写真集の極北。同じように見える動物でも個体によってこれほど差異があるんだといういわば「世界に一つだけの花」的テーマを、鮮やかに外連味なく浮かび上がらせた素敵ブック。刺激されて、町行くおばさんの顔を並べる企画をやった思い出あり。

メール・ヌード・コレクション』(視覚デザイン研究所)
ポーズ集といえば女性ものがほとんどですが、これは男性オンリー。デッサンの勉強用ですが、一般の写真集として見てもすばらしく刺激的な一冊です。巻末のオフカットページでは着衣人の存在が全裸人をより際立てて。貧弱男や肥満男で同じ本を作ってみたいです。

独身者の科学』(伴田良輔河出文庫
若い頃憧れていたのが伴田さんの本。エロなのにお洒落というのが、童貞だった自分には奇跡の組み合わせに映りました。現代生活様式学会の『チンペの飼い方』の設定は、本書に祝辞を寄せているウィルヘルム・リヒャルト先生の存在にインスパイアされたもの。

バカドリル』(天久聖一タナカカツキ/扶桑社)
有名すぎるけど外せない金字塔。内容は言わずもがなですが、黒の線画に赤版をベタで敷くのがなんかかっこいいなぁと思っていました。青空スカイフレッシュなカバー写真も虚を突かれました。本当は『ブッチュくんオール百科』(ソニーマガジンズ)のほうが好き。

イラスト西洋哲学史』(小坂修平ひさうちみちお宝島社文庫
自分は大学で哲学科でしたが、哲学的な知識は大学ではなくすべてこの本で仕入れたように思います。知の探求にしっくりハマるひさうちイラストとの相乗効果が素晴らしい一冊。大げさにいえば、2000年の時間を超えて哲学者たちの脳に乗り移ることができます。

女の飼い方使い方大百科』(データハウス
女性を野生動物に見立てて、その捕獲方法から上手な飼い方、性具としての使い方までを解説した一冊。お洒落とかポップとかはまるで志向せず、デリカシーなく下品な感じでやっちゃうところがむしろかっこいいと思います。フェミニストにはお薦めしませんが。

で、一度提出したけど現在入手不可で残念ながらさしかえとなってしまった9冊はこちら。

『コマボン』(ナガオカケンメイ/扶桑社)
『俺のカラダの筋肉はどれをとっても機械だぜ』(電気グルーヴJICC出版局
『桜画報大全』(赤瀬川原平青林堂
『たのもしき日本語』(吉田戦車川崎ぶら小学館
『Fが通過します』(佐藤雅彦/マガジンハウス)
『記号の事典』(三省堂
『女の飼い方使い方大百科』(データハウス
ブッチュくんオール百科』(天久聖一タナカカツキソニーマガジンズ
『タキモトの世界』(久住昌之滝本淳助/大田出版)
『性器末コレクション』(山口みずか/イーストプレス

古いものばかりですんませんが、影響を受けた本ということになると、どうしても若い頃のものになっちまいますね。というか、これより後はもう本を買わなくなっちゃったから影響を受けようにも受けられないんですね。。。さみしいことです。