俺過去日記.14 18歳童貞編

・1986年5月6日
 連休が終わった。俺は一昨日、伊藤さん*1に電話して遊びに行かないかと言った。しかし断られた。昨日親が来ていろいろ見て回ったので疲れているから明日は家で寝ていたいから、と言われた。出ばなをくじかれた感じ。このまま何もせずにすごしていたらまずいと実感して俺としては思い切った行動に出たのに。今日すれ違ったけど、相内としゃべっていたので、ワーオとつぶやいて通りすぎた*2。一番まずい行動であった。笑ってしまいたい。なんて別に彼女のことはいいんだ。榎本のときみたいな昂りはほとんどないんだ。
 それよりも気になること。俺は後悔することが多くうじうじしてきた。だからその状態を打破しようと、悩むことを強いて中断して行動に出た。ボート部の説明会、テニス部入部、一週間後の退部、伊藤さんへの電話、教養祭実行委員への立候補、プロジェクトチームへの立候補。それらが全て、後悔を引き起こしている。いやな状態をつくりだしている。自分から動き出して全て失敗しているのだ。これはどういうことだ。何もせず状態を維持をしていてもだめ。自ら歩み出してもだめ。これでは俺の立場がない。居場所がない。どうしようもないじゃないか。ついこの前はこう決めた。俺はこの一年間バイトに集中し、お金をつくって、家を出て、バイクを買い、免許を取って旅に出るんだ、と。そう考えて少しは楽になったはず。心が少し晴れ晴れとしたはずだった。それがどうだ。いまはまた悩んでいるのさ。今日は石川さんに愚痴をこぼしてしまった。なんというていたらくであろう。彼女が少し話に乗ってくれたというだけで弱みを見せて。何とかならないもんか。そう考えて、こんな弱音ばかりを紙に書き残して喜んでいる。なんというめめしさ。めめしいと言ったって女をバカにしてるんじゃない。俺は女性をあがめている。そんなことはどうでもいい。他の奴らを見ろ。奴らは毎日楽しそうじゃないか。みんなしっかりした自分というものを持っている。自分の意見を持っているし、自分の好きなこと、やりたいことをやっている。俺ぐらいだぜこんなの。どうして自分のやりたいことが見つかるんだろう。こんなに選択の幅があるっていうのうにみんな一つか二つ選んでうまくやってる。俺にやりたいことはないんだろうか。そんなことはない。バイトしたい、ラッパ吹きたい、バイクのりたい、テニスしたい……。しかしどれか一つとったら他のはできないんだぜ。それでも、迷って何もしないよりは一つでも何かできた方がいいじゃんか。そんなことはわかっているさ。俺だってそんなことぐらいわかる。でも俺の内面なんて弱いものだから。俺はだめである。自分がだめな奴ってことはひしひしと感じている。俺はだめな奴なんだと100%思っているんならなんと楽なことか。幸せなんじゃないか。でも俺は100%そんな風には思えない。心のどこかというか心の端々でまだ俺はすごい奴なんだという声がくすぶっている。100%自分は大物だと思ってるんならそれでも楽で幸せだ。両方いるってのが全ての悩みの原因だ。だめだ。俺はどこかふんわりした、ちょっとひんやりしたどこかに行って寝たい。よだれをたらして鼻をくんくん言わせていたい。ずっとそのままの方がいい。胸の下あたりがウォーンウォーンとうなるのはいやだ。

*1:実際には伊東さん。そんな基本情報すら把握していないとは

*2:そういえばよく口に出してた。自分なりのごまかしのテクニックだった気がする