老兵は去っても老ロークは去らず！／「レスラー」

レスラー　THE WRESTLER
たとえ老兵は去っても老ロークは去らず！アメリカなのに日本酒が似合う中年必殺の一本

　以前は「ナインハーフ」で見せた伝説の氷愛撫プレイに象徴されるセックスシンボルとして、のちには「猫パンチ」を得意とする失笑肌のボクサーとして知られたミッキー・ローク。薬物や整形や暴力で落ちぶれていった彼が、過去の輝かしい栄光を背負って命がけのファイトを続ける老いぼれレスラーを演じた一作だ。
　当然、俳優自身の人生とかぶって見える設定だが、フェロモン満開だった全盛時の面影はなく、前もって言われないと主演がロークだとは気づかないかも。だが、ロークと気づかなくても、この主演男優は明らかに素晴らしく、尊厳フルだ。米国人が主役の米国映画だが、日本酒の熱燗とともに味わいたい。昔の等級でいえば二級の、醸造アルコールをたっぷり使った安酒がイイ。肴は炙ったイカでいい。イカがイイ。
　スーパーでバイトしながら場末のリングにのぼる主人公ランディが、心臓発作を起こして死にかけ、不義理にしてきた一人娘に謝罪して和解するも、ゆきずりの女の誘惑に抗えず結局娘に絶縁されるくだりは、あらゆるダメ中年の共感を誘う。家族よりも女よりも自らの仕事を選び、四角いリングにダイブする彼の姿は、あらゆるダメ中年の尊厳を呼び覚ます。ランディが心を寄せる熟年ストリッパー（トメイ）の崩壊数秒前かと思われる妖艶さも含め、本作で何も感じないとしたら、それは鑑賞者がまだ若いってことだ。（高）

私的オススメ度
★★★★★
ロークは小林稔侍に似てきた。トメイの45歳ボディも奇跡的。

▲スプリングスティーンのエンディング曲もイイ…。

●発売／日活●109分●監督／ダーレン・アロノフスキー●出演／ミッキー・ローク、マリサ・トメイ、エヴァン・レイチェル・ウッド、マーク・マーゴリス、トッド・バリー

レスラー スペシャル・エディション [DVD]