クローンは故郷をめざす

taquai2009-01-21

THE CLONE RETURNS TO THE HOMELAND
●監督・脚本/中嶋莞爾●美術監督木村威夫●出演/及川光博石田えり永作博美嶋田久作品川徹●08年・日/110分●アグン・インク配給●シネカノン有楽町1丁目にてロードショー
宇宙服とクローンと田舎暮らしと石田えり
黄金の組み合わせが生んだ最高級の絵空事

 宇宙服を着た人間をおんぶした男が地平線が見える草原を一歩一歩もたもたと歩いていく…。この幻想的でちょっと滑稽でもある魅力的な情景を思い浮かべてみて心の奥がざわわとざわめいた貴兄には、絶対おすすめの一本だ。
 大気圏外でのミッション中に殉職した宇宙飛行士が、最先端の科学技術でクローン人間として蘇り、少年時代の懐かしい故郷を目指して歩いていくというストーリー。現実離れして破天荒で絵空事であることは確かだが、それは失敗作であることを全く意味しない。
 成功の最大要因は、主人公に、少年時代に自分の不注意のせいで死んだ双子の弟がいた、という設定だろう。田舎の一軒家で母と3人で暮らす幼少期の回想シーンに、クローンを受け入れる意味や、宇宙服を弟と錯覚して背負っていく運命が凝縮している。石田えりが日本のおふくろ女優界を背負って立つ巨星であることも明らかに。こんなかあちゃんにおまえは生き続けないといかんと言われたら、そりゃクローンでも幽霊でもいいから蘇らねばならんし、蘇ったら何はさておき故郷にたどり着かねばならんのが人間だ。(高)

▲プロデューサーの一人はヴィム・ヴェンダース
▲ミッチーが映画初主演。宇宙飛行士とクローン2体の計3役。

http://clone-homeland.com/