亀も空を飛ぶ

去年も行った難民映画祭で「亀も空を飛ぶ」をみてきた。悲しすぎだった。舞台がイラククルディスタンってところで、時期は米軍がイラクを攻撃する前夜で、監督はイランのクルド人。その前情報だけで悲しそうな感じはむんむんしていたけど、タイトルがなんかユーモラスだったし、主人公の少年がアンテナをたてる仕事をしててサテライトと呼ばれている、なんていう紹介文に、一抹のほのぼのさを覚えたもんで、入場無料だしふらふらっと行ってみたわけだけども、確かに「亀」は空を一瞬飛んだと言えるわけだけども、予想したよりも悲しすぎてがっくりうなだれ。おれの場合はがっくりしてもその後350円カレーでも食えばすぐに忘れて柔らかい寝床につくことができるわけだが、この子たちはそうはいかないんだよねということを思い出すとまたまたがっくり。地雷で両手を失った兄と、目が見えない幼児と、住んでた集落をイラク軍に襲われてレイプされてその子を生んだ少女の3人が、サテライトくんのいる村にやってきて、サテライトくんは少女を好きになったりするんだけど、幼児のことを無邪気に愛せない少女は、結局ひどいことをしてしまう。それが、フセイン銅像が倒される日あたりの出来事として描かれる。村の子供たちを掌握しているサテライトとその仲間たちの姿には、フセイン像の腕部分だけ買って帰ってきて一儲けしようと思うあたりには、映画やテレビで見た終戦直後の日本の子供らにも通じるたくましさといじらしさを感じて、それはけっこう希望っぽい光を宿しているけれども、とにかく少女一家が悲しすぎる。。この子、せっかくの美人顔なのに。。出てくる子供たちがみんな素人の現地の子供たちというのが驚き。監督がすごい引き出しぶりを発揮したというよりは、これがまったく現実の世界のために、子供らはそのまんまで存在していればよかったのだろう。がっくり打ちのめされたい人に最適。というか、おれはいまががっくりうちのめされどき。もっともっとがっくりしようと思う。