『犬がいたから』を読んだから…

石黒謙吾さんの処女小説集『犬がいたから』(集英社

犬がいたから

犬がいたから

を遅ればせながら読みました。集英社女性誌ポータルサイトで連載していた「奏でられた犬」に加筆したもの。おれより先に妻が見つけて読んで、泣いたらしく、おれはまたなじられましたよ、「あんたはなんでこういうのを作らないんだ!」って…。あのさ……無理だってばよ…。正直言って、このカバーの犬(名前は石黒先輩)、マジカワユスw 妻が電車で読んでたら、まわりの女子がカバーを見ようとのぞきこんできたって…憎まれそうなニューキラーフェイス! おれ自身はとりたてて動物好きじゃありません。別に嫌いなわけじゃないんだけど、動物がよってきてくれたことないし…。ま、こっちが身構えて心開いてないってことで、それは人間相手でも同じだけど。とにかく、子犬がふとんの中ですりすりと自分にすり寄ってきてくれるなんて……想像するだにジェラシいですよ! そういうふれあい、おれには今後も絶対に訪れないだろうな…。つーか犬がなつかないのも当然のことで、告白すると、おれんちも小1までコロっていう犬を飼ってたんだけど、犬が飼えないマンションに引っ越すことになって、一回知り合いにあげたんだけどそこで鳴き声がうるさいと周りから苦情が出てつきかえされた後、ある日親父が羊ヶ丘展望台のあたりに捨ててきたことがあります…。ごめんなさい…。コロ、この本のカバーでこちらを見つめる石黒先輩のような茶色い犬でした。もちろん豆柴じゃないけど…。なんてことが妻に知れたら、またこっぴどくなじられるだろうなぁ…。つーか、石黒先輩(not犬)にも愛想を尽かされそう…。しかし、コロのことをちゃんと思い出したのは30年ぶりぐらいかも。これを読まなかったら今後もずっと思い出さなかったかも…。そんなおれなので、この本は、犬うんぬんよりも、敬愛する石黒先輩(not犬)のこれまでの生き様がかいまみられたのがよかったです。少年時代に犬と寝ていたこと、芸大浪人時代に名曲喫茶でウェイターをやっていたこと、30歳過ぎてから工事現場の警備員のバイトをしていたこと。知らなかったな〜。これからはナゾナゾの本とか読んでもいちいちバックボーンを想像してしまいそうw 一つ気づいたのは、おさめられている7編のうち、第3話「夜の犬」だけは、具体的な楽曲が登場しないこと。連載時のタイトルからもわかるように、石黒さんの好きだった楽曲がそれぞれ犬とのエピソードをつなぐように出てくるのが本書の構成。ほかでは「ボレロ」とか「展覧会の絵」とか具体的に出てくるし、この章でもイメージ曲として巻末にあげられている曲はあるんだけど、本編には出てこない。想像するに、この話が一番本人の経験談度が高いってことなんじゃないかな〜。ということで石黒さんの原風景が如実に伝わってきた感じがした「夜の犬」が一番印象的だった。あと、どうせ石黒さんのことが書いてあるんだし?、全部一人称のほうがよかったんじゃないかなーと思った。ちょっとシャイネスが入りましたかなw