俺過去日記.4

  • 1986年4月4日

 コーヒー牛乳がコップ4/7ほどあった。牛乳は1リットルあった。牛乳を足して飲んだ。一口飲んでみてこれはイケると思った。口の中にいるときは香ってこないが食道を通り胃につく頃になるとほのかな匂いがした。牛乳ははやく飲んでしまわねばならないので無理に必要以上に飲んだ。飲んでいるうちはさわやかだが飲み終わるといやになった。風呂に入って胃の牛乳をあたためた。内臓と湯がまじりあった。溶液に溶液が溶けた。心臓まで溶けたか。肺は溶けた。なにかこう具合が悪くなった。 こめかみが血を送り出し、その反動で右のはえぎわの細い毛がちぎれそうだ。僕は右のはえぎわの辺りがこわい。さわってみて厚みがないのを確かめるのがこわい。そんなことより依然として内部が具合わるい。腹を割いて臭いを嗅いだらゲロのにおいがするのか。ゲロという名称を考えた人は偉い。本当にゲロという感じがする。最近ゲロという言葉が市民権を得たようだ。以前はもっとライバルがいたはず。それらを忘れてしまうくらいゲロは強力なネームだ。ゲロ自体強力だ。 こう毎日ごろごろとしてばかりいると老けていってる感じがする。若さが失せていっている。合格祝いの礼を書いていてもはやる感じがしない。若者らしい文を意識して書くがほとんどリアルさがない。家庭をもって昔を回想する姿を思ってしまう。集中して何かをやることができていない。本を読んでいても場面を思い浮かべていないことに気づく。歌っていてももう一人自分がいる。オナニーしていても途中で面倒になる。ねていても何か別のことをしている気がする。集中して寝ていない。何もしたくない。かといってねているだけでも楽しくない。いつも牛乳を飲み過ぎた感じだ。社会への憤りもわいてこない。将来への野望もない。性欲まで失せたみたいだ。なんなんだ。 かくまんちに久下と大輔と泊まった。予備校の方が楽しそうに思えた。出してもらったホルモンがやきすぎだった。歯にはさまってうずうずした。次の朝、鏡に映してみるともう歯くそになっていた。歯並びがきれいであってほしい。 オナニーをした後小便すると実にいじらしい感じがする。微妙でせっぱつまったしぶい感じ。年をとって精液が出なくなるのを考えるのはおそろしい。小便のキレが悪くなって残尿感を感じなければならなくなることを考えるのはおそろしい。肛門に力を入れて(これは副作用だが)しぼってもとまらなくなるのだろうか。それともその力が入らなくなるのか。あるいは全く特別な感じがおそってくるのか。どうして今からこういうことを気にしなければならないのか。それは君が老人になるからだ。ということはそれまで生きていることができるのだ。中年のうち、青年のうちに死ぬことはないのだ。うーんそうなのだ。と紙の上では納得したことにする。牛乳とゲロのまじりあいが忘れられない。