東大の貴重書コレクションの一つが新書になりましたよ〜

 せっかく東大にいるんだから東大の本を出しときたいよなあと思っていくつか企画をたてて打診してみたら出してくれるところが見つかってこのほど無事に刊行されましたよ。それがこの本、『君拾帖』。

 東京大学の図書館には貴重書コレクションがいっぱいあるんですが、その中の一つに田中(芳男)文庫というものがあります。田中芳男は幕末の博物学者で日本の博物学の父といわれる偉人で、自分が携わった本とか好きな本とかをいっぱい蔵書していて、それが後に遺族によって東大に寄贈されたので大事に保管してきたわけです。
 で、その中に、芳男が60年にわたって作り続けた98冊に及ぶスクラップ帳がありまして、これが『君拾帖』というもの(正しくは『捃拾帖』ですが、ネット上では捃の字だと差し障りがあるとのことで『君拾帖』となっています)。お菓子の引札とか砂糖のラベルとか本の広告とか弁当の包み紙とか鹿鳴館のメニューとか種痘所のお札とか、ありとあらゆる印刷物を解説レスでひたすら紙に貼り付けてあります。
 で、膨大すぎて全編をきちんと把握できている人は皆無というこのスクラップブックから、おもしろそうなものをセレクトして紹介するという大役を担ったのが、今回の著者であるモリナガ・ヨウさん。おれが「フロム・エー」時代にお世話になったイラストレーター/漫画家さんであり、模型界の偉人なんですけど、実は大学時代に日本史をやっていて、さらに東大出版会の雑誌「UP」で加藤陽子先生と歴史コラムを連載中と、歴史の人でもあったのでした!「こんなのただの古い紙きれじゃん?」としか思えないものでも、歴史の人から地道に説明されると俄然面白く思えるのです。
 で、今回本を出してくれたのは「フロム・エー」時代の初期に編集アドバイザーとして何もわからぬおれ(たち当時の若手編集者)を導いてくれた半蔵門さんこと近藤さん。実は、フリーになってからの長い間、「いつか半蔵門さんと仕事できるようになるんだ」と思いながらきていて、でも結局フリー時代には機会がなかったわけで、今回意外な形でこうしてごいっしょさせてもらえたというのは、おれにとっては感無量なのでした。。。思えば遠くに来たもんだ的な感慨に溺れました。。。
 昨今、東大広報課でもグローバル化&ウェブ化をなんとかするっていうのが大きなテーマとなっていますが、おれの担当はたぶんドメスティック&紙の世界だと思うので、こういう埋もれ気味の東大ならではの財産を拾っていく作業は今後もやっていきたいとぞ思う次第であります。
 ちなみに、この本の場合、(著者印税とは別に)売上に応じた図版の使用料収入が生じるので、大学側にも少しだけ貢献できる、というのも密かな自慢なんですよ〜w