「ザ・ムーン」/コリンズは孤独なんかじゃない!
宇宙に向かう生命体としての本能を呼び覚ます38.4万km彼方から帰還した男たちの名言集
もしも将来、ロボットと人間を判別するのが難しくなったら、この映画を見せてグッとくるか否かで判定すればいい。そんな全人類必見の一本。おれは、痩せた体と縮んだ心の全てをかけて、本作を強薦したい。
NASAの秘蔵映像と月を旅した宇宙飛行士のインタビューで構成のドキュメンタリー。初公開という映像の数々は当然素晴らしい。目を奪われる。でも、38.4万kmの彼方を旅した男たちの語りはもっと素晴らしい。心を奪われる。
かつてのエリート宇宙飛行士たちもいまでは70歳を越し皺の目立つ老人。彼らの話す単語自体はシンプルなものばかりだ。でも、そこには、かつて神の領域と思われた天上の世界に行って帰ってきた人々ならではの深淵がある。
宇宙飛行士のインタビューといえば立花隆の『宇宙からの帰還』が有名だが、あの名著よりも本作は直接的に響く。たぶんそれは、皺を刻んだ元飛行士たちの表情と声に張りがあるから。
特に、マイク・コリンズが魅力的だ。アームストロングとオルドリンの初の月面着陸を司令船から一人で見守った彼は、世界一孤独な存在に描かれがち(『20世紀少年』など)だが、本人は決してそんなことはなかったと断言する。むしろその任務を誇っているのだ。ここに人類の可能性が見えるように思う。
太古、遙かなる祖先が海から陸に上がった。そして人類は宇宙に向かう。それが生命体に擦り込まれた本能だからだ! そしておれは宇宙に向かえていない。それがおれに擦り込まれた本能だから、なのか……。
私的オススメ度
★★★★★
最後に月着陸疑惑説への反論トークが。大人げなくてイイ!
▲月着陸を宣言したJFKの名演説もやっぱり最高だ!
ザ・ムーン IN THE SHADOW OF THE MOON
●発売/アスミック●6月5日発売●100分●監督/デイヴィッド・シントン●出演/バズ・オルドリン、マイク・コリンズ、ジム・ラヴェル、ジーン・サーナン、アラン・ビーン他
- 出版社/メーカー: 角川エンタテインメント
- 発売日: 2009/06/05
- メディア: DVD
- 購入: 1人 クリック: 40回
- この商品を含むブログ (28件) を見る