卒業式

午前中、娘の小学校の卒業式だった。無事に卒業してくれてよかった。おれがこの中で最も一番最大の拍手をしてやろうと思って叩いたけど、どうだったかな。まあ、単打ベースでは最大でないときもあったけど、一打あたりの音量×総打数のトータルでいえば、たぶん最大だったと思うね。あんまり、やつが一年生のときのこととか、思い出せない。もっと小さくてかわいかっただろうなと想像するけど、実はよく思い出せない。いまこのときの娘のイメージが強すぎるようだ。母親はきっと細かいところまで思い出してはぐっときているのだろうと思うが、父親の哀しさか、おれには特に具体的にどうこうというアイテム泣きはなかったけれども、なんとなーく雰囲気に飲まれちゃった感じで、入場の段階でもう落涙だったため、こうしているいまも目がしょぼつきまくりで、それはそれで悪い気はしない。むしろいい気なもんだ。途中、娘の顔がいつにもまして不細工だなぁと思ったら、本人も意外に泣いていたのだった。ま、おれはといえば、今日も娘は全身でからまわり的に行事に参加しているんだなぁと思いながら、一方では、いまここに通り魔が入ってきたら誰よりも早くこのおれがダッシュして手首をねじまげて金玉をつぶしてやるのだというできるわけもない絵空事の意気込みに燃えさかっていて、その燃えさかるおれを思ってじーんとくるというバーチャルな感激のしかたをもてあそんでいたのだったが。そんなおれの強い思念が空想上の通り魔を会場から遠ざけてくれたのだと思いたい。思ってるだけなんだから別によかろう。そんな式典で、一つだけ残念だったのは、誰もいじめについてちょっとも触れなかったことだ。たぶん、ほかのクラスの父兄は、あの一瞬の沈黙の間、単に今日は病気かなんかで休んだだけだとしか思わなかったに違いない。いや、もしかすると同じクラスの人ですら? なんだかなぁと思う。しかし、なんだかなぁとしか思わない。それで目しょぼつかせて悦に入ってるんだから勝手なものだ。