蹴球小河ロマン「さぽみ、ドイツへの道」0

ふと思い出したように、『サポタン』で書いたサイドストーリーを7回連続で掲載するテスト〜。ヤー。日本代表の躍進を願っての縁起担ぎですw

サポタン―サッカー日本代表サポーター’S英単語集

サポタン―サッカー日本代表サポーター’S英単語集

プロローグ
 2006年W杯ドイツ大会に向けて日本代表が四苦八苦していたある日のこと。
 15歳になったばかりのさぽみの目の前に、風に乗って一枚の紙片がひらひらと飛んできました。
「あれ〜、ちょうちょだ、ちょうちょ! 待ってぇ〜」
 持ち前の天真爛漫さをフル稼働させたさぽみが追いかけると、「ちょうちょ」はひらりひらりと逃げていきます。追いかけるうち、いつしかあたりは千駄ヶ谷。国立競技場の前まで来て、さぽみはやっと「ちょうちょ」をつかえまえることができました。
「なーんだ、これ、紙だわ。でもおいしそうな紙だわ。そうだ、近所のこどもどうぶつえんにいる子ヤギのユキちゃんにあげよう!(クスッ)」
 ひとりごとをつぶやきながらよく見ると、それはサッカー日本代表のチケットでした。今日は国立競技場で日本代表の試合が行われる日だったのです。
「ふぅん。サッカーかぁ。日本代表って、おさななじみの日田っちがいつも見にいってるやつね。これからなんだ。別にヒマだし、入ってみよっかなぁ」
 サッカーなんてとくに興味がないさぽみでしたが、なにかに導かれるように競技場へ入っていきました。初めて見る多くのサポーターや、スタジアムの雰囲気に圧倒されるさぽみ。そして、キックオフ。気がつくと、さぽみの隣にガイジンさん(?)が座っていました。サッカーの高揚感と、初めて外国人を近くで見た興奮で、さぽみの小さな胸はドッキドキ。
(わー、話しかけられたらどうしよう! えーと、ナ、ナイス・ツー・ミーチュー? アイム・サポミ・サンキュー? ハワイユー?…って、この人、ハワイ人?)
などと脳内トークを繰り広げるさぽみに、案の定ガイジンさんが話しかけてきました。
「Excuse me. May I ask you a question? What kind of the team is Japan now? The formation is 3-5-2 today? Why is Zico sticking around his overseas favourite? .....」
 さぽみはなにをいってるかわからなくてどぎまぎするばかり。ただでさえ赤らんでいる頬がより紅潮してきました。でも、ガイジンさんの質問はとまりません。
「Why Japanese players smile ,even when they miss? Freedom is always preferred to organization in Zico's team? What is the ''Henagi Cyclone''? .......」
「う、うるさーい!!」
 ついにさぽみは我慢できなくなって叫びました。頬はもう真っ赤。本当は説明してあげたいのに、英語も日本代表もよくわからなくてなにも言えないもどかしさ。恥ずかしくて、悔しくて、持ち前の天真爛漫さの奥に潜む負けん気の強さがスパークしたのでした。でも、このガイジンさん、なぜか引き下がりません。今度はカタカナっぽい日本語で返してきました。
「ア〜、日本人テマジデ英語力ナインダネ〜。ソンナコトジャ百年タッテモオレタチイングランドニハ勝テナイヨ、ワッハッハ〜!」
「なによ! 日本をバカにしてんの? 日本語わかるなら最初から日本語で言いなさいよ! 許せない! フン、ドイツ大会を見てらっしゃい! 目に物言わせてやるんだから!」
「フフ、ソレハヤブサカジャナイケドネ、果タシテ日本ハドイツマデコレルカナ…」
「キーッ! わかったわ! 決勝よ! 決勝で勝負つけましょ!」
「望ムトコロサ。トニカクキミハ英語ヲ勉強シタ方ガイインジャナイ?(laugh) My name is Peter, and you?」
「サ・ポ・ミ! 覚エテオキナサイヨ!」
「オウ、カタカナデ言ッテモダメネ…」
 迷惑顔の周りの人たちには目もくれずに言い合いを続けた二人は、とにもかくにもひょんなことから(?)2006年W杯での再会を誓いあいました。さてさて、どうなることやら……。