新しい漢字本が刊行です!

去年から3月までこつこつやっていた単行本の見本が届きました。題して『知ってるようで知らなかった漢字の意味』(二見書房)。

知ってるようで知らなかった漢字の意味

知ってるようで知らなかった漢字の意味

前に『「漢和辞典」に載っているヘンな漢字「漢和辞典」に載っているヘンな漢字』を書いたとき、監修の進藤先生の漢和辞典を熟読しているうちに、いつも使っている漢字でも生まれた当初はいまとまったく違う意味で使われていたというケースがものすごくいっぱいあることに気づきまして、興が乗ってばーっとリストアップしたらやっぱりかなり量があって、これはいつかまとめなきゃ! と思って営業しているうちに幾星霜、わりとあきらめかけて忘れようとしていたんだけど、ふとしたことから知り合いのフリー編集者が企画を売り込んでくれて、紆余曲折を経て、大ヒット漢字本の実績がある二見書房さんが出してくれることに相成った次第ですよハアハア。監修はもちろん情熱と信頼の進藤英幸先生。はっきりいえば、進藤先生がまとめてきた字書から、素人が見て意外に感じられる意味を持つ漢字を抽出しまくってまとめただけの本といってもいいです。なので、進藤先生の字書をすでに持ってる人にはおすすめできませんが、持ってない人にはおすすめできます。
たとえば「」。いまではあらゆる人がこの字をLOVEの意味で使っているはずですが、実はこの字はもともとは「こっそり歩く」という意味を持っていた漢字なのです。で、LOVEの意味を表す漢字は別にちゃんとあったんだけど、いつしかその漢字は廃れて使わなくなり、たまたまその字と音が同じだった「愛」字がLOVEの意味で使われるようになって今に至る、というわけ(というか、「愛」がもっぱらLOVEの意味で普及しちゃったもんだから、もとの字は廃れて使われなくなったといったほうが妥当かもしれませんが)。だから、たとえば「愛子」という名前は、「愛らしい子」というよりもむしろ「こっそり歩く子」と解釈したほうが原義には近い。抜き足差し足忍び足で歩く泥棒は実は「愛」の体現者だったともいえるわけです!(って原稿にも書いたはずなんだけどいま見たらなかった……チッ!)
「愛」の意味がこのように変化することを漢字用語で「借用」といいますが、いま我々が使っている漢字には、この「借用」のパターンが非常に多いんですよ。驚くほどに。漢字に特別な意味を見いだしてありがたがりたい気持ちはわかるけど、実際にはこういう、音が同じだったから借用されただけ、という漢字が大多数なのです。つまり、おれの理解が正しいならば、5万字をゆうにこえる漢字宇宙を形成したのはこの「借用」だったといっても過言ではないのであります!
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