瀬名秀明さんの本の編集を手伝いました!

 仙台で執筆活動を行っているSF作家・瀬名秀明さんの新刊が出ましたよ! 

世界一敷居が低い最新医学教室

世界一敷居が低い最新医学教室

 ちょっとはりきった感じのタイトルがついていますが、内容的には「近未来診療室へようこそ」とか「身体観測2020」とか「未来の身体との付き合い方、おしえます」とか「人体未来通信」とか「あしたの身体」といった感じが近いと思います*1。メタボとか記憶力とか老化とかうつとか、身体に関する身近なトピックを、科学者出身の瀬名さんがやさしく読み解き、近未来予想図として描き出しているのです! 瀬名さんの書いたまえがきがとてもいい感じなので、さわりを紹介しちゃいますよ。

 これは、私たちの未来についての本です。正確にいうなら、未来を考える私たちの''まなざし''についての本。科学医療の未来はいつだってこんなふうに想像できるんだ、未来を見つめる心はいつだってここにある、すぐれた科学者や技術者といっしょに私たちみんなで育むことができるんだ──なによりもそのことを伝えたくて、このささやかな本をお届けします。
  本書は「夕刊フジ」の医療健康欄に二〇〇七年から二〇〇九年にわたって全九〇回連載されたコラム「イヴのみる夢」を、初出順に完全収録したものです。柔らかめの記事(そうです、あんな記事やそんな記事です)が多い紙面の中で、ちょっとカタい私の文体はかえって目立ったらしく、おかげさまで連載中から予想以上のご好評をいただきました。
 あれっ、最近の記事じゃないの? 内容が古くなっているんじゃないの? と思われるかもしれません。でもページをめくっていただければ、いま述べたように本書のテーマが私たちひとりひとりの本来持っている未来への想像力であることを、きっと感じ取っていただけるはず。
 各コラムにはちょっとした未来社会のスケッチが差し挟まれています。それは、いまの医学や科学技術がまいたタネがほんの少し芽を出して、ちょうど小さな葉っぱを土の中から覗かせたような未来。そんな未来に育つ医学の成果が、各コラムの主役です。
  医学的な背景もしっかりとしていて、しかもその研究者、開発者たちに未来へのまなざしがあり、かつ私たちもいっしょにその想像力を膨らませることができる──そんなスジのいい未来のタネを九〇個集めました。きっと楽しんでいただけると思います。

 おれとしては「スジのいい未来のタネ」ってのがとてもしっくりきましたね〜。瀬名さんが毎週いいタネにめぐりあうために文献を探しまくっていたであろう様子が目に浮かびます。
 本の中で、節電モードずっぽりのいまのおれが特に惹かれたのは、余計な脂肪を電気エネルギーに変換するバイオ電池の話や、歩くだけで平均5wを出力する人力発電装置の話や、ウイルスを原料にしたウイルス電池の話。足こぎ発電機を探したときも思ったけど、もしかしたらメタボ中年は節電界のスターになり得るのかしら、なんて思ったり思わなかったり思ったりw やせぎす中年としてはちと口惜しいわけですが。。。
 瀬名さんといえば、以前書いたように『Globes』を何度か書評などで取り上げてくれた、おれとしては勝手に恩人と思っていた人なんですが、そんな瀬名さんの本の編集を縁あって今回手伝わせてもらったのでしたよ。なんかこう、おれの人生悪くないな…と思いました。たぶん死ぬ間際、あのときは幸せだったなと思い出すことの一つじゃないかと予感しています。。
 じつは、ゲラを仙台の事務所宛に発送した矢先にあの大地震が起こり、もう刊行を遅らせるしかないと東京サイドでは思っていたんですが、仙台が大丈夫なことを訴えたい、とあきらめずに怒濤の復活を果たした瀬名さんが、そこから予定よりはやい著者校戻しを敢行。カレンダー通りの発行が可能となったのでした。
 瀬名さんは現在小説執筆にシフトしているため、科学ノンフィクション本を書くのはこれが最後だろうとのことですよ! http://news.senahideaki.com/article/191707808.html

*1:ちなみにこれらはボツになったタイトル案w