熱中症の警告

さわやか杯1回戦に出場した息子が、熱中症にやられてしまい、試合途中でダウンした。後半の半ばがすぎて、見るからに苦しそうで、ひざに手をついてみたり、顔をしかめてみたり、苦しさは伝わっていたのだが、残り5分くらいだからなんとかだいじょうぶだろうと思ってみていた。負けていたし、なにより我が軍には交代選手がいなかったのだ。まわりの我々父兄たちから、しっかり走れ、がんばれ、負けるなと叱咤されては、自分からギブアップなどできなかったんだろう。ふらふらと自陣と敵陣をいったりきたりしていたが、そのうち、ハーフウェーのあたりで顔をおさえてとまってしまい、鼻血でも出たのだろうと思ったら、汗びっしょりで真っ赤な顔して泣いていた。ピッチ外に連れ出したら、嗚咽しながら立ったままゲロを吐いた。はじっこにつくまでにもう一度吐いた。ふらふらで歩けず、だっこしてフェンス際にすわらせて濡れタオルで冷やした。体がかんかんに火照っていた。ゲロの残り汁が口からだらっと垂れたままで泣いていた。管理室にだっこしていって、冷房のきいた部屋に寝かして全身を冷やして寝かせたら、そのうち元気になってくれたので、救急車は呼ばなかった。冷やしすぎて寒いと言い出して、安心した。帰りの車中では仲間とふざけて騒ぐまでに回復してくれた。
おれ自身は暑さが苦手じゃない。むしろ、エアコンをつけるのが嫌いで、汗が流れるのを感じるのが好きだ。だから、いつも暑さに弱くてダウンしてしまう息子に対して、「へたれめ、しっかりしろゴルァ!」という気持ちを持ってしまう。ときにはそれを口に出してしまう。暑さに弱いのは気合いが足りないからだ、と精神論を持ち出してしまう。周りの子に比べて何もかも弱すぎることにいらいらしてしまう。それでも続けているうちに強くなってくれればと思って今日まできたけど、虚弱体質であることは別に息子の責任じゃなくて親の責任なのだった。やっぱり、周りのレベルについていけない気がする。このままサッカーを続けていても、たぶんまた暑さで倒れたり、熱を出して動けなかったり、相手に吹っ飛ばされて泣いたり、けがしたり、あまりいいことがないような気がする。本来、スポーツが得意なタイプじゃなくて、温厚にただのんびりゲームでもしたり動物をかわいがるのが好きなタイプなんだと思う。だけど、息子は子供時代のおれに似て、親のいうことに素直に従うのがデフォルトになっている子だから、おれがサッカーをやってもらいたいと思っている空気を読んで、サッカーを続けているんだろうと思う。おれは息子がサッカーをしてくれたおかげで仲間ができて、再びフットサルを楽しめるようになったけど、おれのために息子が苦しい目にあうのはちょっといけない気がするのだ。でも、息子に聞いてもサッカーをやめたいとは言わない。中学に行ってもサッカー部に入るつもりのようだ。それが不憫でならない。
暑さに弱いのは、エアコンを使いすぎだからかもしれないよ、と言われた。確かにそうだと思う。暑いからとすぐエアコンを入れてしまう生活を続けていれば、汗腺の機能が退化して、暑いところで汗をうまくかけないようになり、体温調節がうまくいかなくてダウンしてしまう、という仕組みなんだろうと思う。それは考えてみれば前からわかっていたことで、おれ自身はエアコンをつけるのが嫌いであるにもかかわらず、家人の言うことに逆らえずにエアコンをがんがん入れる生活を続けていた。ほかのあらゆる側面と同じように、妻のいうことを聞いているのが楽だからとつい判断をゆだねていたのがいけなかったと思う。息子を暑さでぶっ倒れさせてしまったのは、そんなおれの優柔不断さだったと言える。すべてではないが、要因の一つでは確実にあったと思う。反省しなければいけない。息子が今回のダウンでおれに早めに警告を与えてくれたことを感謝しなければならない。