「裁く」ための練習帳〜

2009年5月の裁判員制度スタートに向けてきっと出版界でもいっぱい本が出てるんだろうな〜と思ってたら、青赤仲間の岡部敬史さんがどかーんと一発ぶち上げていた! それがこれ。

「裁く」ための練習帳―裁判員の必読本

「裁く」ための練習帳―裁判員の必読本

ひと目見て、ひと手触って、装丁がイイかんじ。おれの場合、クリーム色の紙が使われていればもうその時点で上質!って思っちゃうんだけど、この本はカバーも本文用紙もバッチリのクリーム。そして、カバーはコートをかけないしっとりタイプで、全編を通じたモチーフになっているイエローカードを表している角丸長方形のところだけがつるつるしているというもの。見返しの白い紙をはさんで、本文との間に薄い紙を入れてるんだけど、これが透けて本文総扉の角丸長方形がうっすら見えるという趣向。うーん、カッコイイよ……。ブックデザインは信頼のブランド、寄藤文平
内容は、元裁判官で弁護士の森炎さんと岡部さんとの対談形式で、一般市民代表の岡部さんが、プロの森さんに、いろいろな事件の判決について、どうしてこの刑になったのかを聞いていくというもの。
章分けは「親族殺人」「死者一人の事件・事故」「強盗殺人」「通り魔殺人」「放火殺人」「放火」「誘拐」「死亡事故」「危険運転」「その他」。
ポイントは、けっこう誰もが知っている実際の事件とその判決を扱っていることと、それぞれのジャンルで3つの事例を取り上げていること。
事件自体はテレビや新聞でおれでもだいたい聞いたことがあって、それなりに心を痛めたり嘆いたり犯人死ね!と毒づいた想い出もあるのに、その後どういう刑になったのかは知らなかった、っていうケースがほとんど。二人の会話を読む前に置かれている判決ダイジェストを読んだ時点で、えー、そんな軽い刑だったのかよ〜、と驚かされることが多かった。
3つの事例を使うことで、同じ範疇に入る犯罪間の違いが明確にわかるようになっているのは本書の大きな長所だろう(ま、他の類似書をチェックしてるわけじゃないけど〜)。2つじゃ足りないけど、4つじゃ多い。3というのは、違いを引き立てるマジカルナンバーだな〜と思った。違いがわかる男のゴールドブレンド数字、3。…岡部さんったら、策士!
岡部さんはブログ評論や歴史関係のプロだが犯罪や法律については素人で、こっちの犯人は1人殺して死刑なのにこっちの犯人は4人殺してこの罪ってどういうことやねん!?などと疑問に思うところが自分と近いからぐいぐい読める。あれ、岡部さんったらずいぶん聞き分けがいいんじゃないの〜、大人〜、と思ったところもあるけど、裁判員制度スタートを機にいろんなことを考えるきっかけになろうとした目的はばっちり達成されているとおもたよ。
あと、裁判官が法律の許す中で精一杯人間的な判決を下そうとしていることを知れたのがよかったね。メカじゃなくて人間が裁判官でよかったと思う。逆のケースもあるんだろうけど…。
ま、でも、できれば犯罪や事故や裁判とはお近づきにならずに平穏に生きていきたいなーっていうのが一番の思いで、この本をまた開く必要がないことを祈ったり願ったりの小市民でげす。なんて言ってる裁きたくない人でも裁かないといけないのが裁判員制度なんだよね。当たらなくてよかったとひと安堵。と同時に、おれもこういう、世の時流に沿ってて、他人の役に立ってて、そして自分の役にも立つという仕事をしないといかんよなぁ、という思いを強くした感じ。無理っぽいけどなぁ。。。