蹴球小河ロマン「さぽみ、ドイツへの道」.2

●第二章 発展
 ふっきれたように英語学習を開始したさぽみの実力は、それはそれはめきめきと上昇しました。実力が上がったのがわかるとうれしくてまたどんどん勉強、勉強するとまたどんどん実力が上昇、そしてまたやる気も上昇……。完全に英語上達のサイクルにのったようです。
「この調子でいくと、アタシったら英語ペラペラのガイジンになっちゃうかも! そういえば最近、髪の毛も少し茶色くなってきた気がするわ〜(クスッ)」
 絶好調なのは英語だけではありません。サッカーに対する好奇心と愛情もめきめきとアップ。日本代表といえば中田英と中村ぐらいしか知らなかったさぽみが、土肥、田中誠、茶野*1といった地味な控え選手も含めて全員の名前を覚えたのです。
「三浦だっているんだから! またぎフェイントとカズダンスは健在なんだから!」
 三浦カズと三浦アツ*2を間違える初歩的なミスはまだ見受けられるものの、さぽみのサッカーへの興味がノンストップで増大中なのは火を見るより明らかでした。
 そんなある日、さぽみの家の前にひとつの荷物が届きました。差出人は不明。宅配便なら伝票を見れば差出人がわかりますが、この荷物には伝票がついていません。どうやら直接家の前に置かれた模様。しかも、ダンボールにはそばかすみたいなヘンな模様がついています。不審なこときわまりない荷物ですが、そこは天真爛漫なことでは右に出る者のいないさぽみ。めったにない届けものに大喜びです。
「なにかしら? そうだわ! 英語をがんばってるアタシに誰かがごほうびをくれたんだわ! きっと子ネコだわ! ミーちゃんだわ!」
 ガルルといきり立ったさぽみがバリバリと中を開けてみると、そこにはうさんくさそうな手作り風ぬいぐるみが入っていました。少々制作者の意図が計りかねるクォリティーではありましたが、それはたぶん一対のカラスのぬいぐるみでした。子ネコじゃなくて一瞬曇った表情を見せたさぽみでしたが、すぐに機嫌を直して、ぬいぐるみに添えられていた手紙を手に取りました。はたしてそこに書いてあったのは…
「神様じゃ。どうやら元気に勉強しているようじゃな。そんなおまえにわしのしもべ、カラッポ&カラルを遣わそう。この2匹はこう見えて日本サッカーの守り神……の遠い親戚にあたる存在なんじゃ。困ったことがあったらこいつらを頼りにするのじゃ。健闘を祈る。なお、この荷物は自動的に爆発しない」
 よく見るとカラスには脚が4本もついています。日本代表みたいなユニフォームを着ていますが、どことなく色がインチキくさいし、肩のラインが三本線じゃないし、アディダスのマークもなんかヘン。でも、神様がくれたプレゼントにただでさえ赤い頬をさらに赤らめて大興奮しているさぽみはそんなことには全然気がつきません。
「ううう、やっぱり神様はアタシのがんばりを見守っていてくださるのね。よーし、もっともっとがんばっちゃうんだから! これからよろしくね、カラッポ&カララ」
 その夜、ほし草のベッドから空を見上げたさぽみは、遠い彼方で神様がほほえんでくれた気がしました。
<つづく>

*1:本大会メンバーには選ばれず〜

*2:本大会メンバーには選ばれず〜