札幌センチメンタル

 2年ぶりに札幌に帰った。子供を連れていくのは3年ぶり。札幌も東京と同じぐらい暑かった。そしてJR札幌駅があんなに変貌しているとはとは。おやじのラーメン屋「本因坊」は店を閉めたが、おれがバイトしていた中島公園の24時間喫茶カフェ・ザ・バロンもサントリー・ジガーバーソシアルビル店もまだ健在だった。母も変わっていなかった。顔のつやや食べっぷりも2年前と同じ。おれのことを見てもおれだとわかってくれないのも同じ。父は2年前よりも日焼けしているようだった。聞けば、おれと同じ時期に自転車を買って乗っているんだという。顔と性格だけでなく、行動まで同じようだ。違うのは、金。子供に小遣いをやってくれと言ってみたら、おれにもくれた。10万円も。そんなにゆとりがあるんだろうか。いつもおれが、金ないからなかなかこられないと言うから無理してくれたんだろうか。それをほいほい喜んでちょうだいするおれは37歳。老後、娘や息子が訪ねてきたとき、おれは金を渡すことができるだろうか。腹一杯食え、と寿司をおごることができるだろうか。できるとはあまり思えません。いまの父のほうが立派だと思っちゃう。息子は前に来たのが1歳のときだから祖父母とは今回が初対面みたいなもの。やっぱり母にはびびっていたようだ。無理もない。娘はもう8歳だからか、事情がそれなりにわかっているようだ。好きと思わなくてもかまわないから、せめて嫌わないでほしい。昔妹が弾いていたピアノを、30年後におれの娘が弾くのを見るのは、おれにはいいものだった。たぶん父にもそうだっただろう。母にはどうだったのか。軽く、この音がすごい奇跡を起こして病人を覚醒させてくれないかな〜と思ってみたけど、まぁそんなことは起こるはずなかった。30年放置してあるせいでところどころ音が外れているだけだった。そんなセンチメンタルムードの中でヨルダン戦が始まったが、同じ時間に阪神-巨人の放送があるため、父の楽しみを奪うのも悪いので、あまり強く見せてくれとは言えず。ちょこちょことザッピング視聴&酒。でもうまいことゴールシーンは見られた。サッカーってやっぱ断片的に見ても全然ダメね。さっぱり入り込めない。阪神の試合が終わってからはチャンネルをもらってじっくり。PKもじっくり。日本が勝っちゃったのももちろんうれしかったけど、その場にいるみんな、娘と息子と妻とおれと父がみんなでわーっと喜べたのが非常にうれしかった。わかってないけど母もたぶん喜んでたと思いたい。思ってもバチはあたらないだろう。なーんて感じでしんみりとホテルに戻って、なんとなく中だししてしまったのもいまとなってはなつかしい思い出です。