マルク・ビビアン・フォエ

生中継のときは気がつかなかったが、後半開始すぐぐらいにも、
一度ニーダウンで休んでいたという。
担架係の人が転んでフォエの体が落ちそうになったり、
いまいち治療の手際が悪いのが気になったが、あの様子では、
たぶんピッチの上ですでに息絶えていたのではないかと思う。
この日、彼がクラブでもプレーしていたスタジアムには、
母親と奥さんがみにきていたとのこと。
それがよかったのか悪かったのかわからない。
おれだったら……どちらかといえば、みとられながら死にたいかな。


6月26日、リヨン・ジェルラン・スタジアムといえば、
98フランスW杯で日本代表が唯一のゴールをあげた日時、場所。
いまでは自分がどっちサイドのスタンドに座っていたのかもはっきり覚えていないが、
ちょっと独特なゴール裏スタンドの形状と、
中山が決めたときのヒックヒック嗚咽ははっきり覚えている。
おれがサッカーにはまったことを決定づけた瞬間だった。
あそこで選手が、試合中に、何の接触もなく、死ぬとはな。


カメルーン代表もフランス代表も、
もう試合なんてやる気しないだろう。
たとえば、縁起でもないけど、試合中に中田が突然倒れて死んじゃったら、
日本代表は次の試合を闘うことができるだろうか。ムリだ。
それでも、決勝戦は行われるだろう。
両軍は喪章をつけてプレーし、
いつもよりフェアなプレーが増え、
どちらが勝っても互いに相手を称え、フォエに祈りを捧げるだろう。
涙を流す選手も監督も観客もいるだろう。
でも、それだけ。
もうフォエがボールを蹴ることはない。
ヘディングすることもない。ハンドをとられることもない。
メシを食うことも、こどもと遊ぶことも、オナニーすることもない。
それほど知っている選手じゃないけど、
とにかくとてもかわいそうだ。
よしよしと頭を撫でてあげたい。
せめて名前は忘れないようにしたい。
マルク・ビビアン・フォエ。
背番号17。


わがチーム・ピルマでは、岡林の番号だ…。気をつけろ!


そういえば、昔のドラマ「HERO」で、
松たか子カメルーン選手の名前を全員そらんじていた。
フォエの名前ももちろん入っていた。
たか子もどこかで祈ってくれればよいのだが。
頼むぞ、たか子。
あと、中津江村の皆さん。